2022年度卒研テーマ案
2022年3月に研究室配属予定の学部生(2019年入学生)向けの情報提供ページです. 翌年以降も同じようなテイストの研究テーマを提示する予定ですので, コース配属予定の学部生(2020年入学生)にも参考にしてもらえると思います (うちの研究室の配属予定数は2名から3名です).
A. IoT向けブロックチェーンの研究
ビットコインのブロックチェーンには, 一つの取引を完了するのに10分程度の時間がかかるという本質的な弱点があります. また取引の承認をサポートしてくれる採掘者に支払われる手数料も馬鹿になりません. それらの弱点を補うためにこれまでにたくさんの合意形成手法が提案されていますが, 中でも異彩を放つのが,IOTA (アイオタ)という暗号貨幣で採用されているTangleと呼ばれる仕組みです. IOTA Tangleは暗号貨幣としてだけでなくIoT向けの分散元帳としても注目を集めており, 環境中に分散設置されたセンサーが取得したデータをTangleに分散的に書き込むアプリなどの先行事例などがあります. このテーマでは,そのような分散元帳にライフログを記録するアプリを作りたいと考えています (入力デバイスとしてはスマートウォッチを想定). Tangleに記録されたライフログの改ざんは原理的にほぼ不可能ですし,アクセス権を設定すれば 家族やかかりつけの医師にのみデータの閲覧許可を与えることも可能になるため, この研究の成果が医療や介護の現場で使われていく可能性は高いと考えています.
B. モバイルネットワークを使ったサーバーレス掲示板の研究
メタ(フェイスブック)やTwitterなどのいわゆる中央集権型のSNSには, 運営側がユーザのすべての情報を把握しているという特徴があります (フェイスブックの利用者5億3300万人分の個人情報が流出したとの報道が数年前にありましたが, ゼロトラストセキュリティの観点からはプライバシーに関わる 情報を一箇所で集中管理することのリスクはとても大きく,この特徴は弱点と言ってよいと思います). そのようなリスクをサーバを分散化させることで回避しようという試みもたくさん行われているのですが (ActivityPubという規格を使って緩く繋がったMastodonなどのfederated SNSがその代表例です), 情報をどこかのサーバに集めるという意味では,本質的な問題の解決には至っていません. このテーマでは,各ユーザの個人情報や発信したメッセージなどをサーバに集約することなく 共有可能にする技術を,サーバレス掲示板の実装を通して模索していきたいと考えています. ベースになる技術として,分散ハッシュテーブルのオープンソース実装であるOpenDHTと ティム・バーナーズ=リーがWeb3.0の基本構成要素として近年盛んにプッシュしているSolidを用いる予定です.
C.音声を使った空間内付箋システムの研究
近年,音声ベースのシステムが注目を集めています. Amazon Alexaなどのアシスタントツールでは,コンピュータとの間の会話だけでなく, 各部屋に置かれたAlexaと家庭内の無線LANを通して人間同士がコミュニケーションを行う インターフォンのような使い方をすることが可能です. このテーマでは,手持ちのスマートフォンを使って,(あたかも本のページに付箋を貼るように) 空間内の好きな位置にボイスメッセージを刻み込む方法について研究します. ボイスメッセージは,会場内に置かれた(ラズパイなどの)エッジサーバ上に記録します. モバイルアドホックネットワーク(MANET)上でライブビデオストリーミングを実現する方法については, うちの研究室で3年前に実装しており,そのときのノウハウが利用できます (そのときはWi-Fi Directという技術を使ってMANETを構成していましたが, 今回はできれば難易度を少し上げて,Bluetoothを使いたいなと考えています). ポイントは正確な空間情報をどうやって取得するかですが,それについても我々にはこれまでの知見の蓄積があるので大丈夫です (具体的な方法については研究室配属後にお知らせします).
過去の説明文
参考のため,過去の説明文も残していきます.
2021年度用の説明文はこちら
2020年度用の説明文はこちら
2019年度用の説明文は
こちらです.